ゴム銃のオッグクラフト
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スライドの送り機構あれこれ

今回は作者が連発銃(特にP200型)でやたら多用しているスライドの送り機構についてです。

いわゆるラチェット機構を使ったものなんですが、思い起こせばP201(改)を制作した際、スライドボルトを1発分ずつ後退させる方法として導入したのが最初。
これまで、いろいろな作品にこのラチェット機構を組み込みましたが、結果、いくつかのバリエーションが生まれることになりました。

そこでこのラチェット機構のバリエーションについて登場順に解説していこうと思います。
名称をつけるのが面倒だったので、機械的にアルファベットをふってますがそのへんはご容赦を。
そのかわり、わかりやすいようにGIFアニメを付けてみました。

A タイプ(1979年)
a_type

P201(改)に搭載した方式。古いです。
スライドタイプのトリガーの前端に回転軸を持つシア(爪)を取りつけたものです。トリガーとシアを別パーツにしたことで動きに無理がなく、古いながら信頼性は他のものより頭ひとつ抜けています。正確な送り動作が期待できるため、ホールドの間隔もギリギリまで設定可能。装弾数を稼ぎたいゴム銃向きです。
反面、シアを組み込むためのスペースを設けたり軸をつける必要があるので、部品点数はどうしても多くなり、銃も大型化せざるをえません。

Aタイプを搭載しているモデル

  • P201改
  • P201アイオー
  • P201スクエア
  • P203タンデムバレル
  • P204バースト
  • P211タンデムバレルII
  • P213スクエアII
  • B タイプ(2001年)
    b_type

    P202スリム制作時に開発したものです。
    このモデル自体は昔作ったP201(改)のフカヒレ連発方式をリファインしたものですが、コンセプトはボディのスリム化でした。しかし、Aタイプの機構はスリム化には向いていません・・・。そこで考えついたのがこのアイデアです。
    乱暴にいえばAタイプのシアを巨大化してそれ自体をトリガーにしたようなもの。
    回転軸を前後にスライドさせるための溝をフレームに設けたのがミソで、トリガーにラチェット的な動きを与えることに成功しました。
    レイアウト次第で、極端に狭いスペースにも組み込み可能。これは他のタイプには真似の出来ない長所です。
    反面、フレームにスライド用の溝を設けなければならず工作は細かくなりがちです。

    Bタイプを搭載しているモデル

  • P202スリム
  • P202MP
  • P205アイスピック
  • P203タンデムバレルのトリガー部分
  • C タイプ(2002年)
    c_type

    トリガーとシアは一体です。グリップの中でゆるやかに回転運動するリンクアームにトリガーを接続することで、トリガーにラチェット的な動きをさせています。グリップ内に機構部が収まるところが面白いといえますが、この記事を書いている時点でこの機構を採用しているのはP208スリットのみ。
    リンクとトリガーの接続部の支点の位置が重要で、ヘタをするとシアがスライドボルトのラックギアをとらえきれず空振り、ということがあり得るやや危うい機構です。

    Cタイプを搭載しているモデル

  • P208スリット
  • D タイプ(2002年)
    d_type

    トリガーとシアは一体です。トリガーガイドの配置を工夫することで、引きの時はスライド動作、戻しの時はゆるやかに回転運動するようにして、トリガーにラチェット的な動きをさせています。シンプルかつ合理的で、工作や調整は他の機構にくらべ楽チンです。
    反面、トリガーを意地悪く引くと、シアが空振りする可能性があり、安定感という点ではAタイプにおよびません。またこの機構を組み込むにはAタイプと同程度のスペースが必要です。

    Dタイプを搭載しているモデル

  • P209ブルパップ
  • P002トライアル・ワン
  • P003トサカー
  • P401ブイ
  • E タイプ(2010年)
    e_type

    シアがトリガー内に配置され、前面に一部露出しているのが特徴。トリガーを引くと同時に指の腹でシアが押し上げられ、ラックギアとかみ合う仕組みです。トリガーを戻すとシアが下がる構造なので、スライドボルトの復帰の邪魔をしないという機能上の特徴があります。
    反面、トリガーの中にシアを組み込むというややこしい加工が必要です。

    Eタイプを搭載しているモデル

  • P214モドッチャオ
  • F タイプ(2011年)
    f_type

    別名、テコ方式。これまで必須だったスライドボルトのラックギアを省略。トリガー内の支点2つで、スライドボルトをロックしてスライドさせる方式です。ラックギアの加工の手間が省けるところは大きなメリット。
    反面、トリガーの中にテコとして働くパーツを仕込む必要があります。また、トリガーをチマチマ中途半端に引いても、その分だけスライドボルトが後退して、2発バーストをまねく可能性があり、そこが欠点といえます。
    テコ部分の設計しだいでは、スライドボルトをがっちりロックしきれない場合も考えられ、送りの正確性は今一歩でしょうか。

    Fタイプを搭載しているモデル

  • P215シャクリーヌ
  • こうやって並べてみると、あとから登場したものほどゲテモノ化しているというか苦しいというか・・・・。
    完成度が高いと思われるのはAタイプ、BタイプそしてDタイプですね。
    いずれも作動が良好で、それぞれにきっちりとしたコンセプトがあるところがマルなわけです。
    (Aタイプ-安定感・精度、 Bタイプ-省スペース、 Dタイプ-構造がシンプル)
    Cタイプはさらに改善できそうですが、あえて採用するメリットを見いだせない感じ。
    Eタイプは他の機構とは違う一芸を持っているので、作品によってはこれからも使い道がありそうです。
    Fタイプは煮詰めていけば化けるかも?ですが、テコの原理だけで他の機構並みの安定感を確保するのはちょっと難しいかな?

    2012.02.21 UP

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