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CNCルーター
ステップクラフト STEPCRAFT-2 420 (D420)
stepcraft CNCルーター

10年前には考えも及ばなかったデジタル工作機械がここ最近、熱くなってきました。仲間内でも3DプリンタやCNCフライス(ルーター)の導入例が相継いでおり、そろそろ機は熟しつつあるかと、作者も以前から興味のあったCNCルーターを導入することにしました。


ただ、3Dプリンタと違って、ホビー向けのCNCルーターはまだそれほど選択肢がありません。ネットで情報を収集したところ、下記のマシンたちが候補にあがり、さらにこの中から400x300ミリ程度のワークサイズを持つものを必要要件として検討してみることに。

■KitMill SR420/ オリジナルマインド/ 日本
■X-CARVE/ INVENTABLES/ アメリカ
■SHAPEOKO 3/ CARBIDE 3D/ アメリカ
■CNC3040/ CRAVING-CNC(現 OMIOCNC)/ 中国
■CNC3040のクローン/ メーカーいろいろ 不明/ 中国
■CNCボット3040/ CNCボット/ 日本
■STEPCRAFT 420/ STEPCRAFT/ ドイツ


それぞれのインプレッションを列記してみると、


stepcraft CNCルーター
KitMill SR420/ オリジナルマインド
美しくデザインされた外観。品質やサポートの安心感で選ぶならここ。なにかあった時に日本語が通じるのは大きなアドバンテージ。唯一の問題は予算オーバーなこと。


stepcraft CNCルーター stepcraft CNCルーター
X-CARVE/ INVENTABLES
■SHAPEOKO 3/ CARBIDE 3D

メーカーは違えど、SHAPEOKO、SHAPEOKO 2というモデルを祖に持つ異母兄弟のような2台で、むき出し感のある骨組みだけのデザイン。ベース板は共にMDFで精度に一抹の不安が。両社ともネットを積極的に使う今時なビジネス展開が特徴。


stepcraft CNCルーター
CNC3040/ CRAVING-CNC(現 OMIOCNC)
■およびそのクローン/ 各メーカー

いかにも工作機械っぽいがっしりした外観。スペック的にワンランク上のパーツ(ボールネジ等)を使用しつつも圧倒的に安いからか、国内での使用例もけっこう多い。ネックはやはり信頼性か。


stepcraft CNCルーター
CNCボット3040/ CNCボット
上の中国製を少しライトにした感じ。値段の割にホビー用として必要十分なスペックを持っているように思われるが、メーカーのサイトを見ても、ここって個人なの?会社なの?って感じで情報がほとんどない。



なお、中国製の製品群やCNCボットは、ほぼ完成品での提供。
コントロールソフトは汎用のMach3の使用が前提で、パラレル端子付きのデスクトップPCが必要です。
今時、パラレルかよ・・・ということで、このパラレル縛りがPCの調達でネックになるかも。

それ以外のメーカーはキットをいちから組み立てる必要があります。
購入者の組み立てスキルが完成度を左右するわけで、このへんは不安要素ですね。
PCはノート型でもオーケーでUSB接続が基本。それぞれに最適なコントロールソフトがバンドル、あるいは指定されています。

いずれにしても一長一短あって迷います。

stepcraft CNCルーター

そんな中、KICKSTARTER でSTEPCRAFTが同社2代目マシンの開発をネタに、クラウドファンディングの真っ最中なのを発見。プリオーダーを募っていました。
馴染みのないブランドでしたが、ドイツのベンチャー企業で、すでに初代モデルを2000台ほど販売した実績があるとのこと。

スペックはほぼ作者の希望どおり。デザインもきれいにまとまっていて、商品としての完成度が高そうです。オプションで3Dプリンタやレーザーカッターにも変身する拡張性の高さも大きな売り。
ということで、STEPCRAFTいいやん、と気持ちが傾きましたが決定的にネガティブな要素も・・・

このブランド、日本での使用例が 皆無 なのです。ネットをいくら探しても影も形もありません。
代理店もなく、もし導入したら完全に 人柱確定 です。

この孤立無援感は中国製CNCへの不信感をも凌駕するほど。これだけで充分、選択肢から外す理由になりそうですが、

・旧モデルでそれなりの出荷実績がありそうだし・・・
・専用フォーラム(ドイツ語と英語ですが)もあって、トラブル時の役に立ちそうだし・・・
・スペックは一番希望に合ってるし・・・
・将来的にレーザーカッターに変身できるというのもそそられるし・・・
・案ずるより産むが易しというし・・・

そういったバイアスかかりまくりの思考が頭の中をかけめぐります。
メーカーのサイトを見る限りまともな感じで、まあ、売りっぱなしということはなかろうと勝手に決め込んで、クラウドファンディング終了間際(2015年4月21日)にポチってしまいました。

かくして、めでたく(血迷って?)STEPCRAFT-2 420 の導入と相成りました。
ということで、もしかするとSTEPCRAFT機の導入レポートはここが本邦初?かもしれません。



当初、6月中に出荷するという触れ込みでしたが、量産開始時のどたばたで遅れに遅れ、「キャンセルしたろかな」と真剣に思い始めた8月中旬になってようやく「お待たせしました」と連絡がありました。

stepcraft CNCルーター

連絡から2日後には、ややつぶれ気味の大きな段ボール箱がドイツからUPS便で到着。ここだけは鬼のような早さです。

stepcraft CNCルーター

中にはさらに箱がふたつ。組立キットとオプションのアルミテーブルの箱です。

組立キットの箱を開封したところ。プチプチでくるまれたパーツがぎっしり。

stepcraft CNCルーター

英語の冊子が3部同封されていました。
・組立マニュアル
・ファーストステップ
・マシンの説明・仕様書 です。

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予想以上のパーツの多さにうんざりしつつ、まずはパーツリストと照らしながら員数チェック。

stepcraft CNCルーター

この組立マニュアル、文章を極力省いて絵だけで説明した、いかにもEU製品らしいバタくさい構成です。
他の2冊(ファーストステップとマシンの説明・仕様書)はいわゆる印刷屋の仕事ですが、この組立マニュアルは、自前でインクジェットプリンタで印刷しました感がぷんぷんします。

でもよくできてます。
ややこしい組立なのに絵だけでよく説明できるなあ、と感心。
実は、2ヶ所ほどパーツ名とサイズ表記に誤記があり、少し「ん??」となりましたが、組立には特に影響なしでした。

ただ、左右の動きを制御するX軸のモータの取り付けは、マニュアルどおりにいかず・・・。
六角レンチの回転角に余裕がなさ過ぎて、取り付けネジが回せず、しかたないので、同じサイズのプラスネジで代用しました。
それ以外はほぼマニュアルどおりの組立で、1日半ほどで完了。


じゃあ、他に問題はなかったのか?というと、やはりありました。
絵だけの説明ならではの弊害が・・・。

この手のマシンの可動部はスムーズに動くのが前提でしょうが、どれくらいスムーズに動けばいいのか説明ではわからないのです。
実際の組み付けはけっこう硬めで、手で押して惰性でスーっと動くほどの軽さはなく、果たしてそれでいいのか悪いのか、マニュアルだけでは知る由もなし。
(他社の、例えばSHAPEOKOの組立動画では、スイスイ軽く動いているので余計不安になります。)

文章主体のファーストステップ本のほうには「スムーズに、抵抗なく動くこと。問題あれば調整せよ」的なことが書かれていますが、表現はそれだけです。

この点だけが大きな不安要素として残りつつ、組立を終えたのでした。

stepcraft CNCルーター

で、これが完成した状態です。
他社のマシンと明らかに違うのがZ軸(高さ方向)の可動域。
3Dプリンタとして使うことも考慮されていて、トラベル量は140ミリあり、「門」とZ軸がそびえ立っています。
反面、この仕様だと防音ボックスを作る場合、高さ方向にスペースが要るのがデメリットになりそうです。

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Z軸(高さ方向)を駆動するスクリューとモータ。可動域が大きいのでスクリューも長めです。

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裏に回って、X軸(左右方向)のスクリューとモータ。

stepcraft CNCルーター

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モータやリミットスイッチから生えるケーブルは、黒いチューブの中でいったんまとめられ、左側の門柱の中を通って、底部へ導かれます。
このへんは、むき出し前提のアメリカの2社のものとは対照的で、ケーブルを極力見せないデザインはよく考えられています。

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Y軸(前後方向)のスクリュー。カバー付きで普段は外からは見えません。

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白いテーブルは、8ミリ厚の圧縮ボードにプラっぽいものをラミネートしたもので、棚板のようです。
中国製マシンの重厚なメタルテーブルに比べるとチープな印象です。

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標準装備のブリッジ型のクランプ。
他社のマシンでは見かけないタイプで、鉄のアングルをテーブル上に橋のように渡して、直にボルトでワークを締めつけて固定します。
アイデアはよいのですが、実際はアングルの剛性が足りず、クランプシステムとしてはかなり微妙。

stepcraft CNCルーター

同時にオーダーしたオプションのアルミテーブルです。

stepcraft CNCルーター

換装するとこうなります。見た目だけでいうと、このマシンには白いテーブルのほうが似合っていますね。
Tスロット用のクランプはそのうち自作するつもり。

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加工サイズは420x300ミリ。作者の作品のサイズを考えると、最低でもこのサイズが欲しかったのです。
それでいて全長550ミリ、全幅440ミリ、重量15キロとコンパクト。取り回しのよさもこのマシンを選んだ理由のひとつ。

stepcraft CNCルーター

stepcraft CNCルーター

stepcraft CNCルーター

stepcraft CNCルーター

すっきりしたデザインですね。カラーは違いますが、なんとなくプロクソンの工具を彷彿させるところも。

stepcraft CNCルーター

スピンドルの取り付け部。
全長を短縮するためか「門」の後ろ側にZ軸が取り付けられていて、そこからスピンドルの取り付け部が水平に延びてきます。
稼動中、この水平部分がクランプと干渉してしまいそうな嫌な予感が・・・。

丸いノズルっぽいのは集塵用のアダプタ。
穴径が細いせいか、実際に掃除機につなぐと高周波的なノイズが発生して、このままでは使えません。なにか対策を考えないと。

stepcraft CNCルーター

stepcraft CNCルーター

切削用のスピンドルは、高価な専用モータをはじめとして、いろいろな選択肢が用意されています。
作者はその中からドレメル4000をチョイス。
ただ、EU用の220ボルト仕様のものが来ても困るので、オーダーから外し、オクで日本仕様の中古をゲットしました。
専用のアダプタをねじ込んでマシンに取り付けます。

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電源は大きめのACアダプタ。100-240Vで使用可能なので日本の100Vもオーケー。
ただし電源プラグは御覧のとおり、EU仕様のまま・・・
変換プラグ(SEタイプから日本のAタイプへ)を別途用意しましたが、このあたりはいかにも不親切です。

stepcraft CNCルーター

前もって安物のエンドミルを中国から仕入れました。
Aliexpressで購入しましたが、日本のネット通販では見かけないものもあって、けっこう使えます。



次に付属のモーションコントロールソフトについて。

stepcraft CNCルーター
stepcraft CNCルーター
通常、STEPCRAFTに標準で付属するコントロールソフトはビギナー用に機能制限されたWinPC-NCスターターというものですが、作者は機能制限なしのフルバージョンをオーダーしました。
stepcraft CNCルーター

てっきりWinPC-NCのフルバージョンがついてくるものと思ってましたが、実際にバンドルされてきたのはこのUCCNC(CNCdrive社)というソフトでした。古臭いデザインのWinPC-NCに比べると、インターフェースが洗練されています。

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試作の最終段階でバンドルされるソフトがWinPC-NCからUCCNCに変更されたようです。
UCCNCの仕様に合わせ、本来USBだったマシンの接続端子もパラレルタイプに変えられています。

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これはUCCNCに付いてきたUC100というデバイスです。
これを介してPCとマシンをUSBで接続します。単なるパラレル-USB変換アダプタのような見た目ですが、コントロール機能を内蔵しており、これを介さないとUCCNCでマシンを動かせません。

stepcraft CNCルーター

マシンのパラレル端子にUC100を装着したところ。このUC100とPCをUSBケーブルで接続します。 なお、UCCNCとペアリングできるUC100は1台のみに制限されています。

マシンの接続端子がパラレルということは、Mach3などのパラレル接続が前提のソフトも使えるということです(たぶん)。

UCCNCをインストールするためのPCは、手持ちの予備機(Core2Duo)を流用。
もっとも、UCCNCはVistaでは動作しないので、OSをWindows7に入れ替えるという余計な手間が発生しましたが。(Xpはいけるのに・・・)
OSを入れ替えたあと、付属のCDを使ってUCCNC、UC100用のドライバ、メーカーが設定したマシン用のパラメータをインストール。

最後に、STEPCRAFTからメールで送られてきたUCCNCとUC100をカップリングするためのライセンスキー(textファイル)をUCCNCのプログラムと同じフォルダにコピー。

しかしですよ、このライセンスキーの扱い方について、STEPCRAFTのマニュアルには説明がなく、UCCNC本家のマニュアル(当然英語のみ)をネットで探し出して解読する必要がありました。
このあたりは説明が行き届かないところで、手間かかりますよね、やっぱり。

とけっこう前準備に骨折りながら、ようやくUCCNCでマシンをコントロールできるようになりました。

CNCルーターで加工するには、
1. CADソフトで図面を描き
2. CAMソフトで切削条件やパスを設定してGコードファイルを生成
3. Gコードファイルを読み込ませたコントロールソフトでマシンを動かす
というソフトの三段構えが必要です。

昔から聞き覚えのあったCAD/CAMという用語の概念が、今になってようやく理解できた作者なのでした。

作者の使うソフトは
CADソフト・・・・・・ Inkscape(フリー)
CAMソフト・・・・・・ Vectric Cut2D(マシンと同時購入)
コントロールソフト・・UCCNC(マシンにバンドル)

CADとCAMはリビングのPCで操作。
作成したGコードファイルを USBメモリで OneDrive経由でコントロール用のPCに渡してマシンを動かす運用です。

Inkscapeは以前から使ってますし、CAMの操作もなんとかなるかな、とたかをくくってましたが、わけがわからないのはコントロールソフトのパラメータ設定。
ここは素直にSTEPCRAFTがあらかじめ用意したパラメータを使うしかありません。

さて、情報不足系で困った点がここでも発生。
Vectric Cut2DでGコードファイルを生成する時に、それぞれのコントロールソフトに適した形式(ポストプロセッサーと呼ばれる)で保存する必要があるのですが、UCCNC用のポストプロセッサーが保存形式のプルダウンリストの中にないのです。

マシンについてきた冊子にもそのへんの情報は載ってません。
しかたないので、STEPCRAFTのサイトにある英語フォーラムを探ったところ「UCCNC用のポストプロセッサーとして、Mach用の"Mach2/3 Arcs(mm).txt"を使うべし」との書き込みを見つけました。
このへんの情報の欠落ぶりはちょっといただけませんよね。いくら量産しょっぱなのドタバタしているさなかの出荷だったとは言え・・・。

stepcraft CNCルーター

マシンとPC、ソフトの準備がやっとこさ整ったところで、いよいよ付属のファーストステップにしたがった稼働テストにかかります。

可動部のスムーズさ加減について、正しいかどうか、わからないまま組み立てたので、ちゃんと動くのかしらん、と不安いっぱいです。

でも案ずるより産むが易し。

特にそれが原因の不具合もなかったようで、すんなり動いてくれました。テスト用サンプルも写真のとおり切削できてホッとしました。
とりあえず、稼働テストもつつがなく終えることができたので、いよいよ実際に図面を描いて加工に入ります。

stepcraft CNCルーター

これが作者が初めてCNCで切削したパーツになります。
ボーっと見てるだけで同じ形のものが複製されていくというのはなんか不思議な感覚です。

stepcraft CNCルーター

作ったのは、このマシン自身で使うためのクランプでした。



稼働時のファーストインプレッションとしては、一番心配していた騒音は思ったほどではないかなと。
もちろんうるさいことはうるさいですが、トリマーの凶悪な切削音に比べるとだいぶマイルドです。
例えるとうるさい掃除機という感じで、ずっとそばについていると段々耳について、嫌になってくるレベルの音かなと。
それでもマンション住まいなので、防音ボックスはいずれ作らないといけませんが。
それと、切粉があまり宙に舞わないような気がしますが、これは気のせいか?


ということで、CNCの導入レポートでした。これから使っていくうちに、予期せぬ場面に遭遇して右往左往することになろうかと思いますが、なにかあればまたレポートしたいと思います。

このマシンに関連する記事
・トラブルで右往左往するレポートはこちら
・防音ボックスの記事はこちら
・CAD( Inkscape)とCAM(Cut2D)の相性問題はこちら

2015.09.13 UP

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