東急ハンズ主催の手づくり作品コンテストで、1983年にスタート。この手のコンテストとしては規模が大きく、これまで1〜2年おきに計20回開催されてきました。テーマは自由。プロ・アマ問わず誰でも応募できる間口の広いコンテストです。
ただ、残念ながらこのコンテスト、2006-2007年の第20回開催をもって終了してしまいました(涙)
作者のP503ドットデルがハンズ大賞でテクニック賞を受賞したのが、まさにこの最後の回。
最初で最後のワンチャンスで受賞できたわけですが、当時の資料の断片や掲示板の過去ログが残っているうちに備忘録化しておこうと思います。
作者はこの作品に限らず、制作途中の様子を具体的に掲示板へ書き込むことはしないのですが、それでもところどころにそれとにおわせるスレッドがありましたので、それらもできるだけ拾ってみることにしました。
このP503ドットデルの元となったのがストリング・リリース方式のP501レイヤーです。
こいつのバレルをガトリング型にして、ホールドピンをいっぱい植えてモータで糸を引っ張れば多装弾の電動マシンガンになる、という漠然としたイメージはあったのですが(まあイメージするだけならナンボでもできますが・・・)、それを具体化する案がなかなか浮かびませんでした。
漠然としたイメージで終わっていたのは、ホールドピンを前後方向に長くつらねると、連射とともにリリースポイントが少しずつ移動することになりますが、巻き取り装置もそれに合わせてスライドさせなければ!と思い込んでいたからです。
で、これってめちゃくちゃややこしそうなのでした。
でも、これってむずかしく考えすぎでした。単に巻き取り装置のシリンダを長くするだけで、糸がそれなりにズレながら巻き取られていくわけですから。
■2006年6月17日
この簡単な理屈にはたと気がつき、制作を開始したのがこの日です。しかし、この時点では、まだハンズ大賞への応募はまったく意識になかったのでした。
ちなみにこれがその当時の自サイトの掲示板に書き込んだスレッドです。
■2006年6月後半
理屈は簡単だったはずですが、実作を始めたところ、文字どおりのっけから引っ掛かりました。
■2006年7月某日
で、そんな時、たまたま東急ハンズに行ったところ、こんなパンフレットをゲット。
第20回ハンズ大賞の募集開始のお知らせでした。ちょうどドットデルを作りかけていた矢先だったので、こいつでいっぺんトライしてみようと決意します。
この時点から、制作のモチベーションも自己満足モードからコンテスト応募モードへシフトしました。
ちなみに第20回ハンズ大賞のタイムスケジュールはこうでした。
●応募:2006年8月1日〜11月30日
↓
●1次審査:2006年12月中旬
↓
●2次審査:2007年1月下旬
↓
●結果発表:2007年2月下旬
↓
●表彰式:2007年3月29日
↓
●作品展:2007年3月30日〜4月1日
8月から応募できますが、作品が出来たからと言って早々に応募用紙を送ってしまうと、あとから作品に手を加えられなくなります。やはりギリギリまで粘るのが吉ですね。
■2006年8月
猛暑のせいでペース上がらず。まあ、あわてなくてもまだ時間はあります。
■2006年9月
そろそろ本気を出さねばと考え出した時期です。装弾数アップのため、500連発オーバーのバレルも新たに作成しました。
全体のカタチもほぼでき上がり、あとは配線と細かい仕上げを残すのみとなりました。
しかしです。見れば見るほど作品に精度感がありません。ガンロッカーで公開して自己満足するだけならともかく、コンテスト用としてはどうにもお粗末な出来なのでした。
■2006年9月末
そこでバレルと電動エンジン以外のすべてのパーツをいちから作りなおすことにしました。
主材も軟らかいシルクウッド(板材)からラミン(角材)へ変更します。
■2006年10月〜11月
ラミン材と格闘しながら、制作に没頭。9月に購入したプロクソンの電動丸ノコ盤が角材のカットに威力を発揮しました。
■2006年11月中旬
あせりながらも締め切り月になんとか完成にこぎつけました。
コンテストへの応募は作品を作ればそれで終わりではありません。
最後に応募用の書類作成が残っています。応募用紙はA3サイズで、左側に作品の説明を書き、右側に写真や図を貼り付ける仕様でした。
応募にあたって付けた作品名は
「504連発 糸巻式ゴム銃」
字面だけで作品の内容がわかるようにあえてベタな名前に。
1次審査は書類選考のみなので、この応募用紙の出来が合否を大きく左右するはずです。説明文と写真の構成を必死に考えました。
応募用紙に貼り付けた写真です。何回もテスト印刷を繰り返し、解像感のあるカリッとした画質に仕上げて、貼り込みました。
■2006年11月20日ぐらい
ハンズへ応募用紙を郵送。これで無事エントリーが終わりました。
締め切りは11月30日(必着)なのでギリギリですね。
■2006年12月3日
ドットデルとほぼ同時に完成したP502イトヲカシをガンロッカーで公開したところ、驚天動地な出来事が!
■2006年12月中旬
いよいよ東急ハンズによる1次審査(書類選考)スタートです。
この審査でほとんどの作品がふるい落とされ、2次審査に進めるのは200点程度です。そこから最終的に入選・入賞に選ばれるのが約150点ということなので、1次審査を通過すればぐっと入選圏内に近づきます。
実際どのような審査をしているのか詳細は不明ですが、後に発行された作品集を見ると審査員の先生方(なんと25年間、メンバーは不動!)が分厚いファイルに目を通しているシーンが載っていました。
■2006年12月25日
1次審査を無事通過!クリスマスにお知らせの封書が届きました。大きな封筒だったので、すぐにそれとわかりました。
封筒には2次審査用の書類一式も同封されています。
2次審査を受けるには実物を送らなければなりませんが、東急ハンズも手慣れたもので、専門の配送業者へ連絡すれば、着払いで作品が届けられるシステムになっていました。1月14日までに発送しろとの指示です。
■2007年1月上旬
恒例の正月旅行から帰宅後、さっそく2次審査用の書類を作成。
組み立て方や展示方法、操作方法などを書き込んでいきます。
ドットデルは電源スイッチの操作方法、タコ糸の巻き方ぐらいの説明で済んだのですが、複雑な作品の場合だとけっこう厄介なことになりそうです。作った本人でないとわからないことも多いでしょうから。
2次審査で入賞あるいは入選が決まると、4月の作品展終了まで作品が手元に戻ってきません。そこで、ガンロッカー用の写真と実射動画をあらかじめ撮影しておきました。そして効果のほどは不明ですが、実射動画をCD-Rに焼いて書類に同梱。
最後に作品を梱包するためのケースをプラダンで自作。これにて準備完了です。
■2007年1月13日
配送業者へ作品を引き渡してあとは運を天にまかせます。
余談ながら、自宅に来た配送業者が用意した送り状の宛先が、なぜか「欽ちゃん仮装大賞宛」になっているのに気づき、その場で伝票を書き直してもらいました。
気がつかずにそのまま渡していれば、東急ハンズとはぜんぜん関係のないテレビ局へ作品が送られてしまうところだったのです。危ないアブナイ。
■2007年1月中旬
2次審査がスタート。
集められた作品を一点々々、吟味するようです。
後に発行された作品集に、審査員の先生方がたまたまドットデルを取り囲んで審査しているところが掲載されていました。
■2007年1月23日
いきなりケータイへ東急ハンズの事務員から電話がかかってきました。入賞の一角、テクニック賞に決まりました!との内定連絡です。
やったぜ〜!
■2007年2月21日
第20回ハンズ大賞の結果が正式に発表されました。ほどなくして入賞のお知らせと表彰式の案内状が郵送で届きました。
■2007年3月29日
東京渋谷 Bunkamuraで開催された表彰式に出席。
立派な表彰状と盾をいただきました。続く内覧会で他の入賞、入選作品をじっくり観察します。レベルの高い作品が多く、正直なところ、入賞と入選を分けるラインがよくわからなかったです。
なお、今回の応募総数は1400点ちょっと。例年よりずいぶん少なかったようです。そのうち、入賞が29点、入選は112点でした。
■2007年3月30日〜4月1日
表彰式の翌日から3日間にわたり、同じ会場で入賞・入選作品の作品展が開催されました。仕事の都合で表彰式出席後に、すぐに帰らざるをえなかったのが残念でした。
■2007年3月30日
表彰式から帰宅後、すでに書き上げて保留していたドットデルの紹介ページを、ガンロッカーにアップしました。
応募の条件に「作品は未発表のものに限る。」というのがありましたので、この日まで発表を控えていたのでした。
ただ、すでに年末から年始にかけて、マイスターさん、ハンターさん、はくどさんが同じ仕組みの糸巻きガトリングを発表済み。ネットでは新鮮味のないものになっており、遅きに失した感がありましたが。(´ヘ`;)
■2007年4月中旬
ドットデルが数ヶ月ぶりに返却されてきました。なぜか輪ゴムが数十発装填されたまま。作品展開催中にハンズのスタッフがデモったのかな。それとも遊んだのか。
これをもって長かったハンズ大賞への挑戦はようやく終わりを迎えたのでした。
制作開始から完成、応募、審査待ち、表彰式とかなりの長丁場で、途中いろいろハプニングもありましたが、腕に覚えがある人は一度、この手のコンテストにチャレンジしてみるのをおすすめします。
というのも自己満足のために作るのと、コンテストのために作るのとでは気合いの入れ方が自分でもびっくりするぐらい違ってくるからです。
例え審査結果はよくなくても、工作テクのレベルアップにつながること間違いなしです。
2010.02.21 UP